
初めに、この記事は漫画『ひゃくえむ。』の感想記事のため、漫画のネタバレが含まれます。完全にネタバレ全開なので、それでも良いという方のみお読みください。
※そして、この記事に書かれていることはあくまでも個人の意見です。
どうでもいいのですが、私はここ最近すごく忙しくて、ブログを書く暇も全然ないです。今年度はブログの投稿は昨年度に比べて圧倒的に減ります。詳しくは私のXの固定ポストを見てください。
読んでからかなり時間が開いてしまいましたが、余韻は冷めていません。一体いつごろ『ひゃくえむ。』を読み、読んだ直後にどう思っていたかは以下の私のXのポストを見てください↓
#ひゃくえむ
— 鹿田鹿雄/チャームロッカー (@deer_charmlock) 2025年4月5日
魚豊先生の漫画『ひゃくえむ。』を読み終わった。
私は今年公開予定の映画のために読んだのですが、この漫画凄い。
この話の面白さと「走り」のアニメーションが加わるならもう映画は傑作になるのは確定では。#映画好きと繋がりたい #映画好きな人と繋がりたい
#ひゃくえむ
— 鹿田鹿雄/チャームロッカー (@deer_charmlock) 2025年4月5日
(おそらく)映画好きの方々にはこの映画(漫画)の存在があまり広まっていないかもしれませんが、断言します。
この映画は間違いなく今年のダークホースとなるでしょう。
あの話にもの凄いアニメーションが加わるなら、傑作確定です。#映画好きと繋がりたい #映画好きな人と繋がりたい https://t.co/BolbniSVEK pic.twitter.com/qgrT9V5rPR
この映画の監督は『音楽』の岩井澤健治監督なのですが、『音楽』を観た方には監督のアニメーションの手腕が分かるでしょう。
— 鹿田鹿雄/チャームロッカー (@deer_charmlock) 2025年4月5日
漫画ではどうしても伝わりきれないような表現が、アニメーションならできる。
岩井澤健治監督が一体どのように描くのか。#映画好きと繋がりたい #映画好きな人と繋がりたい https://t.co/xLT33klDEt
『ひゃくえむ。』を読んだ感想
一言で言うと、惜しい要素は明確にあるものの、かなり面白いと感じました。点数で表すと100点満点中80点の面白さでした。
ここからは私の感想を惜しいと思った点と良いと思った点でそれぞれ書いていきます。
先に惜しいと思った点から書いていきますが、80点と高めの点数であるため、良いと思った点のほうが断然多いです。後からポジティブな意見を聞くほうが皆さん的に良いでしょう。
惜しいと思った点
小学生トガシや中学生仁神の言い回しが年齢に合っていない
小学6年生が言うような台詞とはとても思えないくらい現実味がないと思えるものが多かったり、中学生仁神の小学6年生に対する言い回しも、小学6年生にはよく伝わらないだろうなと思えるものが多いです。
特に、小学生トガシの台詞である「"走り方"は"フォーム"とはまた別のところにある」や「最適解なフォームなのにその走り方には未来が見えない」についてはなんなんでしょう、この今までに多くの選手を見てきたベテランコーチみたいな話し方は。本当にトガシはこの時小学6年生だったんですか?
まあ、この漫画は全体的に大人向けだと思いますし、小さい子供が読む漫画ではないだろうと想定されてわざとそうしているのかもなと思いました。
ですが、私的には少しでも現実味があって、分かりやすい言い回しの台詞で展開される方が多くの人が楽しめると思っています。わざわざ難しい言い回しで言う必要がないと思っているので、これについては悪いと思った点とさせていただきます。
公式大会までの高校生編に納得がいかない
小学生編と比べたら間違いなく面白さは失速しているし、突っ込みどころが多かったりあり得ない展開が多い印象でした。私的にはアメフト部の話はそんなに大事かな?と思いました。そんなにアメフト部との闘いが描きたかったのか?そんなにアメフト部の暴力描写が描きたかったのか?とずっと読みながら思っていました。アメフト部まわりの話はもっと別の形で表現できなかったのかな?と思いました。そもそもトガシは喫煙と陸上部(サダヒロ)への暴行動画をどう入手したんでしょうかね?
あと、教師が生徒の住所を教えている時点で漫画としてもあまりにもおかしいですよ。そんなことが許されるはずがないじゃないですか。個人情報保護法に違反してます。「いいけど...」って何なんですか平子先生、良くないですよ。ここについては普通に浅草さんや貞弘から教えてもらうで良かったと思います。
ギャグが不釣り合い
この漫画においてはギャグは不釣り合いだなと思いました。トガシがLINEを誤送信する下りや、平子先生の「うるせぇ」ぐらいで学校のトレーニングルームが使えるようになるのが私的には冷める要因でした。今までずっとシリアスな展開だった中で「シリアスな笑い」を表現したかったのでしょうが、本編の話にあまり活かせていなく、この漫画においては合わないと思いました。
あと、平子先生が「校内設備なんとか使えるようになったよ」と言ってましたが、一体あの後誰と話して許可が出たのかもよく分からないのもいろいろ適当だな〜と思いました。
肉離れなのに走るのはおかしすぎる
流石に肉離れなのに走るというのには説得力がなさすぎると思いました。肉離れの状態で予選から決勝までずっと難なく走り続けられるのは流石におかしいです。
私的には選手生命には関わらないけど走るのには辛い怪我の方が良かったのでは?と思いました。それに決勝でトガシが走ってるコマで「似た感覚だった」と体育祭の時を思い出しているのですから、体育祭の時と同じ怪我で良いんじゃないかと思いました。
良いと思った点
多くの登場人物に感情移入ができる
「走る」という特別なルールや技術がいらない競技を題材にするからこそ、間違いなく多くの人が感情移入できる物語になっているなと思いました。人間の心情で一番触れてほしくないようなところを容赦なく踏み込んでくるといいますか、よくぞこんな着眼点ができるなと思いました。
才能を持つ者と持たざる者の両方にしっかり感情移入できるのが見事です。陸上の才能を持つトガシや仁神、トガシたちのような特別な才能はないけれど一生懸命努力する浅草さんの心情が本当に自分のことのように思えるのです。私は陸上経験者(長距離でしたが)だからそう言えますが、陸上未経験の人もきっと同様でしょう。
私はこの漫画を読むまでトガシのような明らかに常人を超えた才能を持つ者の気持ちなんて考えたことがなかったですし、才能を持つからこその孤独というのが私にはとても新鮮でした。
特に私がこう感じたのは、仁神が才能が劣化し、居場所がなくなって全てを諦めたのにも関わらず、本気で悔しく感じたところです。「この痛みの治療法は1つしかない」という言葉は本気で刺さりました。私的にメインキャラの中では仁神が一番共感できるキャラでした。あまりにも私の境遇と似ているんです。
自分の善意から自分の誘いで柏木を陸上部に勧誘したことで、かえって自分で自分を窮地に立たせてしまう。こんな経験は多くの方が経験していることなんじゃないでしょうか。それで最終的に「あいつを誘っていなければ」と考える。「俺は勝手に天才に救われると思ってた」という他人に期待していたことが分かる台詞や一連の流れには自分も心が痛くなりました。
言葉のセンスがかっこよすぎる
「いる音」「"日常の差"で勝つ」「10秒で潰せますよ本物なら」「ここに必要なのは脚2本」
これらの台詞は私が『ひゃくえむ。』を読んでいて「言葉のセンスが良いな...」と特に記憶に残ったものです。全体的に哲学的な話なので自ずと台詞が深くなったのかなと思いますが、それにしてもどうしてこんなにかっこいい台詞を作れるんだろうと、作者の頭の良さを常に実感していました。
ページの使い方が上手い
「もちろん真剣(ガチ)で」に見開き2ページを使っていたり、仁神が悔しい気持ちになっている表現で1コマの中に収める台詞の量が絶妙だったり、「この100mは俺の25年!!」に使われている合計4ページで歴代のトガシの脚だけを映していたりなど、漫画でしかできないと言える表現を贅沢に上手く使っているのには本当に驚きました。しかも作者の魚豊先生は『ひゃくえむ。』が連載デビュー作とか、本当に天才だと思います。
「もちろん真剣(ガチ)で」についてはオーバーラップがあまりにもかっこよくて興奮しました。
最高の結末
一体なぜ走るのか?その答えが「走るのが好きだから」と気付いて笑っているトガシと小宮。トガシはそれに気付いたことが本当に嬉しかったのか、泣いているのが自分の人生を肯定しているようで私もとても胸が熱くなりました。
最後の勝者が誰なのか明らかにならないのも本当に上手いと思います。勝ち負けに拘らず、自分の好きなことを見つけた方が大きな財産になりますからね。
結論:作者の頭が良すぎる
この作品は一言で表すならこうでしょう。本当に読んでてずっとこう思っていました。
映画への期待
私は絶対2025年公開映画のダークホースになると思っています!
私的に、『ひゃくえむ。』というアニメ映画が2025年に公開されることは映画好きやアニメ好きに、この記事を書いている段階(2025年4月15日)ではあまり多くの人に知れ渡ってはいないと思っています。ですが、口コミによって話題になるアニメ映画になると思っています。原作者である魚豊先生の知名度から原作者のファンはまず観に行くだろうし、キャストによってはそのキャストのファンも観に行くと思っています。それらのファンから徐々に口コミが広がり、映画好きやアニメ好きの間でも話題になっていく、という流れになると思います。
近年だと、『ルックバック』や『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のような立ち位置になると思っています。そして2025年公開映画の中で年間ベストに挙げる方も出てくると思っています。
以下、私がそう確信する理由を紹介していきます。
大元の面白さ
映画では尺の都合上、間違いなく省略や改変があると思います。私の中では登場人物の心情や過去を少なくとも1本の映画、約2時間で全て描くことは不可能だと思っています。しかし、私がこれまでに語ってきたように、大元がとても面白い話です。話の本筋が損なわれない限り、面白いものになっていることは間違いないと思っています。
そして、話の本筋が損なわれないと確信していることにも理由があります。それは、監督が岩井澤健治監督だからです。
岩井澤健治監督の手腕
『ひゃくえむ。』の監督を務めるのは岩井澤健治監督です。知らない方も多いかもしれませんが、岩井澤監督は原作からさらに説得力を持たせる脚色力とアニメーション化する能力が巧みです。なので岩井澤監督なら間違いなく良いものに仕上げてくれるでしょう。
そもそも、私が『ひゃくえむ。』を読んだのは岩井澤監督の新作映画だからという監督の映画という理由だからです。私は岩井澤監督の映画は『音楽』しか観ていませんが、それでも次回作が観たいと思わせられました。それぐらいには私は岩井澤監督に期待しています。
脚色力として、岩井澤監督は過去に『音楽』という映画を監督しているのですが、原作をしっかり理解しており、短編漫画を長編映画として成り立たせるよう肉付けしています。
映画『音楽』については過去に紹介しているので、気になった方は読んでみてください↓
そして、アニメーション化する能力として、岩井澤監督は観る者を凄いと思わせるアニメーションを作ります。
『音楽』と『ひゃくえむ。』の両方の原作に登場人物が「凄い」と感じる場面があります。『ひゃくえむ。』はまだ映画が公開されていないので何とも言えないのですが、『音楽』では登場人物が明らかに衝撃を受けていることが視聴者に伝わるアニメーションを作っているのです。
具体的に『音楽』における『凄い』という台詞は、原作でははただ「うおっ、凄いな」程度であるに対し、映画では「え!?何だこれは!?」と明らかに衝撃を受けていることが視聴者に伝わります。どのようにその衝撃を受けているかは↓の画像となります。

これを見て一体どういうこと!?と感じた方、絶対『音楽』の映画を観てください。
『ひゃくえむ。』の映画でも『凄い』という台詞に納得させられるような凄いアニメーションを期待しています。
話を変えると、岩井澤監督は『音楽』のように『ひゃくえむ。』も「ロトスコープ」という手法を使ってアニメーションを作るようです。
「ロトスコープ」とは、実写の映像をトレースしてアニメーション化する手法で、より現実感のある動きを表現できるようです。『音楽』を観た私としては、確かに動きに深みが増して凄いアニメーションだったと感じたことを思い出しました。『ひゃくえむ。』も同様の手法で制作されるのは正解だと思います。
「ロトスコープ」について詳しく知りたい方は↓の記事を読んでみてください。
『ひゃくえむ。』がロトスコープで制作されていることについては↓の記事で確認できます。
さらに、私は↓の記事での岩井澤監督のコメントで凄いアニメーションを見れることは間違いないと確信しました。
最後に
私の力では『ひゃくえむ。』についてあまり上手く語ることができませんでしたが、映画には本当に期待しています!岩井澤監督が一体どのように「走り」のアニメーションを描くのか、期待大です!
この記事を書いている段階(2025年4月15日)では2025年に公開するという情報以外何も明かされていないのですが、もうそろそろ予告編が公開されるのではないかなと思っています。
公開までは『ひゃくえむ。』の漫画を読んだり、岩井澤監督の『音楽』を観て、岩井澤監督のアニメーションがどれほどのものなのか予習したりして待ちましょう!
追記(2025年4月21日)
ついに情報解禁されました!↓がポスターとなります。

9月公開と、私としては思ったより早い公開だなと思いました。
特報に対して反応記事を書いたので、是非読んでみてください↓