
この映画は「ボクシング」そのものを描いている。ボクシングを愛する複数のボクサーたちを非常にリアルに描き、都合良く試合に勝つことがなかったり、勝っても後遺症が残り続けたりという、「ボクシング」というスポーツの過酷さを強く実感できる。
この映画は脚本が本当に素晴らしい。誰よりも勝ちたい気持ちはある瓜田が、最後だけ都合良く勝つこともない。樽崎がボクシングのセンスがあることは間違いないが、都合良くプロとしてすぐに上り詰めていくこともない。小川は日常生活に支障をきたすほど後遺症の進行が重い中、ボクシングをやめるという選択肢を考えない。勝ちたい気持ちで勝てるスポーツではなく、勝っても後遺症をもたらす可能性があるのはもはや当たり前という、「ボクシング」そのものを描いた脚本が物語として非常に面白い。
ボクシングに打ち込む場面以外にも、日常の場面においてもリアルに描いている。樽崎のプロライセンスを取得したことの自慢の仕方や、小川が前のアパートのエアコンのリモコンをうっかり持ってくる。これらが観客にリアルに感じさせるためだけの要素として終わらず、物語としての面白さをしっかりもたらしている。具体的には、エアコンのリモコンを小川が自転車に乗って返しに行く場面で、そこでボクシングの後遺症による目眩を自然に挿入している。
ただ、惜しい点はありました。特に、小川が目眩で視界がふらつく演出と、樽崎の祖母の存在の2点です。
前者については、観ていて非常に漫画らしい演出に感じられますが、前後の演出を通して観た場合、少なくともこの映画においては浮いていました。私だったら、余計な演出は一切入れず、引きの画を撮り続けます。なんせ、自転車に乗っていた小川が倒れた場面の画は引きの画でしたから。
後者については、樽崎の家庭環境がリアルに感じられる分には良いですが、祖母が認知症のため、お店の羊羹を購入前に食べ、通報を受けるという展開が、物語としての面白さをもたらすことはありませんでした。この映画においては、樽崎の祖母の存在はいらず、樽崎が一人暮らしである方が良いと思いました。
しかし、全体的に脚本が本当に素晴らしいため、総合的な点数は86点という印象になりました。



