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【ネタバレ感想】映画『机のなかみ』76/100点

 

 

この映画は物語としての面白さと人間のリアルさの描写の両立が上手い。前半と後半での構成の変化によって、物語の見え方が意外になりつつ、登場人物のリアルな心情によって引き込まれるようになっている。

 

この映画は脚本が上手い。

前半と後半で、それぞれ馬場と望の視点を描くという構成の変化。

それによって徐々に明らかになるそれぞれの登場人物の真実。

そこで描かれる、登場人物のリアルな心情。

スティーヴン・セガールのパロディの『沈黙の沈黙』といった、クスっと笑えるネタ要素。

映像だから表現できる、望の部屋でそれぞれの登場人物が違う理由で責め立てるという、カオスな場面。

これらの要素が、望が受験勉強を頑張っていた理由、馬場に好きな人関連の話をしていた理由も含め、望の青春物語の面白さを増大させている。

 

特に、後半の早い段階で望の好きな人が、馬場の教え子の一人である凛であると明かすことで、納得感を伴った伏線回収に観客が興奮できるだけでなく、等身大の女子高生の青春物語の導入に成功している。

そして、望と多恵の間に生まれる距離感を、バス内の場面の積み重ねによって、ものすごく自然に、かつ、リアルに描いている。自分が好きな人との付き合いを、多恵が愚痴を直接望に吐き続ければ、リップクリームを貸したくなくなるのも、ビンタするのも完全に納得できるようになっている。

 

ただ、惜しい点はありました。馬場の視点での展開が大して必要性がないことと、望の行動の一部が納得できない点です。

もちろん、前者については物語としての意外性を持たせられる利点はありますが、望が主人公である印象が強すぎることにより、特に望との片思いが必要ないです。前半と後半のどちらの方が面白いかは観客によって異なりますが、それでも本筋には関係ないことは事実です。また、馬場が望との初対面から好きな人関連の話をしすぎる描写は、あまりリアリティがありませんでした。

後者については、望が馬場のことを何とも思っていないにしては、馬場の肩を割と愛情をもって揉んでいたり、馬場が望の服を脱がしてもなぜか無反応であったりと、納得できない点が多かったのが残念でした。

 

しかし、全体的に脚本が上手いため、総合的な点数は76点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『メリちん』80/100点

 

 

この映画は人間をリアルに描くのが上手い。3人の登場人物の最低限の過去の情報から、時間が経ってもそう簡単に変わらない人間関係、都合よく良い状況になることがないことが、観ていて創作感をあまり感じさせないことに成功している。

 

この映画は脚本が上手い。

名前が付けられている登場人物が極めて少ないことを活かし、序盤からの違和感が徐々に露呈し、観客に気まずさや逃げ場のなさを強く感じさせる脚本。

"メリちん"と呼ばれることがなぜ嫌で、しかもなぜこの映画のタイトルになっているのか、絵日記を書いているという設定を活かした伏線回収。

これらの要素が、他者が想像もしないことを考えていたことが判明するという、物語としての面白さとリアルさをもたらしている。

 

ただ、惜しい点はありました。

絵日記を出した意味がやや強引で、漫画家を目指すというメリーの夢を叶えるための手段としても弱い点と、タラがメリーの家の前で寝ているという展開がいらないという点です。

前者については、タラが暴走し始めるという展開にすること自体は全く問題ないのですが、そのきっかけのためだけに絵日記を出した感じが否めませんでした。出した理由はメリーの夢を叶えるためという設定でしたが、特に夢に向かって少しでも漫画を描く描写もないため、そもそもその設定すら物語上に意味を成していないのが残念でした。

後者については、タラが寝る必要性がないように感じました。メリーの家に携帯電話を忘れ、家に戻ってきたものの、濡れ場のような声が聞こえたため、聞き入るというのは自然でした。そして、後にタラが女ものがないかこっそり物色するというのも自然です。ですが、夜のうちには家に入れないというのが分かっているのであれば、別に家の前で寝る必要がないはずです。メリーもマチも後にその件に触れていないため、いらない展開だと感じました。

 

しかし、全体的に脚本が上手いため、総合的な点数は80点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『なま夏』54/100点

 

 

この映画はストーカーをリアルに、恐ろしく描くのが上手い。おそらく多くの観客が主人公の行動に対して理解できないし、したくもないでしょうが、まるで本物のストーカーをそのまま登場させたようにしか思えませんでした。

 

この映画は脚本が上手い。

話の展開に必要な登場人物にだけ焦点を当てた脚本。

主人公の変態性や身勝手さ。

杏子が電話中だというのにやることをやれと指示してくる母親のリアルな様子。

主人公の手紙に対する杏子の反応。

公衆トイレ内の落書きのリアルさ。

これらが観客にリアルに感じさせるためだけの要素として終わらず、物語としての面白さをもたらしていることが多い。

 

ただ、惜しい点はかなりありました。

女子高生の制服に突然着替えたり、自転車のサドルが盗まれる展開、主人公が無断欠勤を理由に勝手に亡き者扱いされるなど、意味不明かつ物語上特にいらない描写。

主人公が電車内で杏子を刺したというのに警察沙汰にならないというような、現実的にあり得ない展開。

主人公は結局は首吊り自殺していて、病院の下りは妄想だったというような、唐突すぎるかつ、興ざめする終わり方。

全体的には脚本が上手いですが、惜しい点が致命的であるため、総合的な点数は54点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『四月の余白』92/100点

 

 

この映画は人間の心情をリアルに描くのが本当に上手い。各々の登場人物の、過去の自分から簡単には変われないこと、都合よく良い状況になることがないことが、観ていて創作感を感じることがほとんどなく、まるでありのままの実話を、一切脚色することなく、そのまま映画にしたようにしか思えませんでした。

 

この映画は脚本が本当に素晴らしい。

テーマを伝えるために本当に必要な登場人物にだけ焦点を当てた脚本。

みらいの里に入っている子供たちの、社会的に悪とされる過去を抱えている様子。

みらいの里の子供たちが海斗をあっさり受け入れることなく、むしろほとんど全員が嫌っている様子。

みらいの里の急な解散後に、ほとんどの子供たちがそう簡単には社会になじめない様子。

そして、西が海斗に「ベンツを2台でも3台でも買ってやる」という伏線が自然に回収され、海斗が何かしら西に心を開き、おそらくほんの少しでも変わってきていると分かるわずかな希望。

これらが観客にリアルに感じさせるためだけの要素として終わらず、物語としての面白さをしっかりもたらしている。

 

特に、海斗だけでなく西も「今は完全な善人である」と美談で終わらせていない点が素晴らしい。海斗の父である陽平や詩との会話から、西も本当に変わったのか、西は本当に正しいのかと、自然に考えさせられる。西以外についても、ほとんどの登場人物の人間的に良くない、あるいは社会的に決定的に悪い部分をぼかすことなく描いている。

 

また、演出面も素晴らしい。週刊新報の取材後の西の目を傘によって隠すという演出や、海斗が西を探すのを締めてしまうところで、春であることを象徴する「芽」を映すカットが『四月の余白』というタイトルをよく象徴できていました。

 

ただ、惜しい点はありました。特に、週刊新報の存在を悪として描きすぎているリアリティのなさと、西が電車で隣の人の会話で笑うという終わり方についてです。

前者については、これまでの展開が非常にリアルであった中、明らかにそこだけ雑に描かれているのが惜しかったです。映画の尺的に、なるべく短い時間でみらいの里の子供たちが急に社会に出た時の様子を描きたかったのでしょうが、詰め込みすぎ感が否めませんでした。

後者については、「芽」を映すカットで終わらせた方が良かったと思います。あくまでも主人公が西である以上、西は本当に変わったのかを示す必要はあるのかもしれませんが、西が笑うところで『四月の余白』というタイトルを出すよりは、間違いなく「芽」を映すカットで『四月の余白』というタイトルを出し、そこで終わらせた方が映画的に美しいと思います。

 

しかし、全体的に脚本が本当に素晴らしいため、総合的な点数は92点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『ヒメアノ~ル』98/100点


※初めに、この感想にはこの映画の原作となる漫画『ヒメアノ~ル』のネタバレも含まれます。

 

 

この映画は明確に原作を超えている。無駄に登場人物が多く、内容を詰め込みすぎた原作から本当に話に必要な部分だけを抽出し、それらをさらにリアリティあふれる展開に昇華させている。

 

この映画は脚本と演出が本当に素晴らしい。

原作から限定した登場人物の数、限定したことによって少しずつ変わる登場人物の行動、リアリティが格段に増した台詞回しなど、見ていて原作より非常に現実的に上手く描けていて、かつ、物凄くテンポよく描いています。

特に、原作で描かれていたモノローグがなくなった以上、台詞や演出でしっかり心情が伝わっていたり、登場人物の多くが変人で、そのほとんどが異常なほどに生きる理由に執着していたり、台詞やモノローグが説明的すぎるというリアリティの薄さを見事に払拭しているのが素晴らしいです。

原作に本当に必要な登場人物しか映画には登場させないことで、登場人物の多さによって話の本筋から脱線していた原作の欠点を明確になくしています。

台詞については、原作から短く、それも観客に伝わりやすく変換できていて、リアリティがあふれています。

映画ではちゃんと明かされるユカが岡田を好きになった理由。安藤が「絶対はない」を言う場面の変更。久美子が「森田を殺そう」と和草に言う場面が、和草が車を警察署の駐車場に停めた場面への変更。森田が河島を殺して自慰行為によって興奮を覚えるのを和草の回想で自然に描いている点。久美子が森田に殴られているときに漏らしている点。森田が和草と久美子を殺害する際に、岡田との興奮の対比として濡れ場と殺人の場面を交互に切り替えている点。「安藤が入院する」という要素をヘルニアじゃなくて森田に撃たれたからという理由で話に緊張感を持たせている点。岡田がカフェに初めて行った際に森田だとすぐに気付いたのは、過去に関係性があったからだという変更。説明会という名目で森田が岡田の母に電話をし、岡田の住所を知る流れ。「窓から飛び降りる」という要素を物語のクライマックスのために昇華している点。森田が車を運転する際に平気で運転手の頭を轢いてる点。森田と岡田がゲームを通じて友達になっていたという事実が明確に分かる点。そして、犬を連れた老人を思わず森田が車で轢かないように避けた理由。これらが観客にリアルに感じさせるためだけの要素として終わらず、物語としての面白さをしっかりもたらしていて、日常の中に突然殺人鬼が現れたらどうなるか、原作を明確に超え、リアリティをもたらしています。

 

ですが、惜しい点はありました。森田がユカを狙っていた理由が映画ではよく分からない点です。原作と同様に音楽教師に似ていたからという理由に映画も合わせる必要はないと思いますが、ユカが岡田のことを好きになった理由がしっかり描かれた以上、こちらは描かれないのは残念でした。ただ、それ以外は本当に非の打ち所がない脚本の完成度から、総合的な点数は98点という印象になりました。