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【ネタバレ感想】映画『BLUE/ブルー』86/100点

 

 

この映画は「ボクシング」そのものを描いている。ボクシングを愛する複数のボクサーたちを非常にリアルに描き、都合良く試合に勝つことがなかったり、勝っても後遺症が残り続けたりという、「ボクシング」というスポーツの過酷さを強く実感できる。

 

この映画は脚本が本当に素晴らしい。誰よりも勝ちたい気持ちはある瓜田が、最後だけ都合良く勝つこともない。樽崎がボクシングのセンスがあることは間違いないが、都合良くプロとしてすぐに上り詰めていくこともない。小川は日常生活に支障をきたすほど後遺症の進行が重い中、ボクシングをやめるという選択肢を考えない。勝ちたい気持ちで勝てるスポーツではなく、勝っても後遺症をもたらす可能性があるのはもはや当たり前という、「ボクシング」そのものを描いた脚本が物語として非常に面白い。

ボクシングに打ち込む場面以外にも、日常の場面においてもリアルに描いている。樽崎のプロライセンスを取得したことの自慢の仕方や、小川が前のアパートのエアコンのリモコンをうっかり持ってくる。これらが観客にリアルに感じさせるためだけの要素として終わらず、物語としての面白さをしっかりもたらしている。具体的には、エアコンのリモコンを小川が自転車に乗って返しに行く場面で、そこでボクシングの後遺症による目眩を自然に挿入している。

 

ただ、惜しい点はありました。特に、小川が目眩で視界がふらつく演出と、樽崎の祖母の存在の2点です。

前者については、観ていて非常に漫画らしい演出に感じられますが、前後の演出を通して観た場合、少なくともこの映画においては浮いていました。私だったら、余計な演出は一切入れず、引きの画を撮り続けます。なんせ、自転車に乗っていた小川が倒れた場面の画は引きの画でしたから。

後者については、樽崎の家庭環境がリアルに感じられる分には良いですが、祖母が認知症のため、お店の羊羹を購入前に食べ、通報を受けるという展開が、物語としての面白さをもたらすことはありませんでした。この映画においては、樽崎の祖母の存在はいらず、樽崎が一人暮らしである方が良いと思いました。

しかし、全体的に脚本が本当に素晴らしいため、総合的な点数は86点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『空白』98/100点

 

 

この映画は人間の心情をリアルに描くのが本当に巧い。自然体な心情が、それがどこか複雑であることも、自分の醜悪な部分が良くないと思っていながらも、簡単には変われないことも、観ていて創作感を感じることが全くなく、まるでありのままの実話を、一切脚色することなく、そのまま映画にしたようにしか思えませんでした。

 

観客にとことんリアルな重苦しさを感じさせるための脚本が本当に素晴らしい。登場人物の数、それぞれの登場人物に焦点を当てる時間の配分、そして登場人物の行動、計算のされ方が何から何まで完璧でした。何も関係ない選挙の宣伝看板に八つ当たりする翔子。いかにもマスゴミな悪意ある報道。報道された人をすぐにコラ画像化するネット民。再び万引きを見かけるも、自分から手を出せない直人。自分の行動は良くないと思い、弁当屋に謝罪の電話をかける直人。必死に自分の中で抑えていた感情を、ボランティアで思わずぶつけてしまう麻子。そして、居心地の悪さを感じつつも、花音は充との思い出を大切にしていたと分かるイルカの雲の絵の伏線回収。これらが観客にリアルに感じさせるためだけの要素として終わらず、物語としての面白さをしっかりもたらしている。

脚本だけでなく、花音が二段構えで車に轢かれる様子も、観客に絶望感を与える演出として非常に優れていました。

 

直人の痴漢疑惑を学校側が提示したのにも関わらず特に回収されなかった点が残念だったことと、タクシーに乗っている時に充には花音の姿が見えるという演出がいらないように思えましたが、それ以外は本当に非の打ち所がない脚本の完成度から、総合的な点数は98点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『π』19/100点

 

 

この映画は観客に理解させる気がない。だからといって、理解できなくても面白いかといえば、面白みに欠けている。「数字に取り憑かれていく」という面白い設定をまるで活かせていない。

 

この映画はいわば、数字に取り憑かれて最終的に自殺する、本当にそれだけだと思いました。マックスの能力を欲しがる株家や宗教家、隣人やかつて「π」の研究をしていた友人のソルを「一応」出しているだけで、どれも中途半端にしか見えない。とにかくマックス以外の登場人物が「とりあえずいる」だけで、物語がまるで進まない。

それでいて、物語についても何もかもが唐突です。急になぜか脳みそが出てきたり、マックスが坊主になったり、血だらけの手の男を目撃するなど、とにかく観客に理解させる気がありません。

 

また、この映画のタイトルは『π』ですが、物語を通して「π」と関係性があるとは全く読み取れません。数学者の物語なのに特に数学的な物語でもないのはどうかと思いました。硬派な数式や数学用語はとりあえず出しているだけとしか思えません。私だったら、『π』というタイトルに意味を持たせるため、「π」と関係性がある物語になるように株家は登場人物に出さず、宗教家やソルの描写を中心に描きます。

 

一部の演出や、全てを理解してしまった代償として、マックスが今までは朝飯前だった簡単な計算ができなくなってしまうという終わり方は素晴らしいと思いましたが、全体を通してこの映画の良さが特に見えてこなく、とにかく理解できないまま終わるため、総合的な点数は19点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『ヒグマ!!』30/100点

 

 

この映画は面白い設定をほとんど活かせていない。「闇バイト」と「ヒグマ」という、一見交わることがなさそうな2つの要素を合わせると、物語にどのようにプラスに働くかを全く考えられていない。闇バイトの物語として見ても、ヒグマとの戦いの物語として見ても、何もかもが破綻している。

 

そもそも、この映画はいらない要素が多すぎるし、突然なぜか観客を笑わせようと寒い展開を何度も入れてきたりと、物語の展開的に白けるものがほとんどだと思いました。

神崎が「見せるな」と言っているのに若林が小山内の右耳の傷を写真に撮って小山内に見せて、小山内を気絶させたり、若林のお気に入りホストがなぜか小山内に似ていたり、小山内のゲームのファンで服や武器も支給してくれる少年を登場させたり、最後にエンジェルを殺させるためにヒグマが宝石を食べるという設定にしたことなど、観客の誰もが「えー...」と物語が進むごとに白けさせることを目的にしているかのようにしか思えませんでした。特に、若林のお気に入りホストが判明した後の、夜の街を背景にしてトラックの画像が雑に画面上を動く場面は意味不明かつ編集としてあまりにもダサいです。小山内がゲームを作っている設定についても、最後のヒグマの倒し方から逆算してとりあえず入れたようにしか思えませんでした。

 

この映画のテーマは「ヒグマは怖い」ではなく「闇バイトはやめよう」だと思われますが、そもそもこの映画を観て「闇バイトはやめよう」と本気で思う人はほとんどいないでしょう。事実、雑に黒幕であるエンジェルをヒグマに殺させても、「闇バイトはやめよう」という結論には至ることは合理的に考えてあり得ないじゃないですか。変に欲張って「闇バイト」という独特の要素を入れて失敗するぐらいなら、そもそもやめた方が良いですよ。私だったら、「闇バイトの任務に失敗した人たちを、黒幕側が自分たちの手を汚さずに処分するために、狙ってヒグマが生息している山に置き去りにする」という設定にします。これだったら若林の処分のためにわざわざ山に行った理由として筋が通ります。

 

『ヒグマ!!』というタイトルが出るまでの冒頭は「ここからどう闇バイトとヒグマという2つの要素が繋がるんだ!?」と常に興奮させられ、ヒグマの登場の仕方、ヒグマの怖さの演出も本当に素晴らしかったですが、それ以降は脚本が壊滅的であるため、総合的な点数は30点という印象になりました。

 

【ネタバレ感想】映画『28年後... 白骨の神殿』18/100点

 

 

この映画は扱うべき題材を決定的に間違えている。こんなにも話がまるで進まない展開に映画1本という枠を捧げて良いのだろうかと思いました。ケルソンとジミーを退場させるためだけに、しかもあまりにもあっけないのが本当に前作からの続編として間違えている。サムソンが元の人間に戻っているのかもしれないという、観客の誰もが気になると言える展開をおざなりにして、サムソンよりは間違いなく気にならないと言える展開を、壮大な茶番として終わらせる。これを映画1本という枠で描くのだから、扱うべき題材を決定的に間違えているとしか言いようがない。

 

まずそもそも、副題が『THE BONE TEMPLE(白骨の神殿)』である意味をどこにも感じられない。なぜこの副題なのか私には到底理解できないため、これなら『28 YEARS LATER PART 2(28年後... パート2)』で良かったと思えました。私だったら、あくまでもこの映画においては、安易に「パート2」とはつけずに、本編を通せば理解できるような、深い意味を持たせる副題にします。

 

開幕の暗転した画面で叫び声だけを出して、すぐに「28 years later ...(28年後...)」と出し、またすぐに現在(28年後)の場面に切り替わるのが本当に分からない。28年前の状況を全く映さずに「28 years later ...」と出されても、観客は素直に納得できないだろう。私だったら、前作『28年後...』の冒頭とはまた違った28年前の状況を映す。この映画においては、ケルソンの過去か、匂わせのためにサムソンの過去を映すのが最良でしょう。

一方、(副題がこの映画に適しているかは置いておいて)副題である「THE BONE TEMPLE」の出し方は本当に良いと思いました。『28』シリーズにおいて、地続きの続編、副題がある映画は今までなかったので、この「初めて」という状況をどう切り抜けるのかが私は非常に気になっていました。シリーズにおいて、暗転してから画面の右下に「28 〇〇 later...」と出るのがお決まりとなっていましたが、この暗転のタイミングで副題を出すのはおかしいなと私は思っていたので、間を置いてから副題を出すのは本当に良いと思いましたし、同時に「そういう出し方しかないよな」と非常に納得しました。

 

映画の最後に『28日後...』の主人公ことジムと、ジムとセリーナの間に生まれた娘と思われる少女が登場しましたが、とりあえず登場させた感があまりにも強く感じました。「旧主人公(ジム)と新主人公(スパイク)が合流すればシリーズファンは盛り上がるだろう」と、制作陣は考えたのかもしれませんが、自然な流れで登場したとはとても思えませんでした。前作同様、続編を考えた終わり方をしているため、続編でジムを再登場させる必然性を感じさせる展開が見れるのかもしれませんが、「もっと良い登場のさせ方があったのでは」と感じたのが現状です。

 

「レイジウイルスのパンデミック発生から28年経った現在でも現状が変わらず、感染者も変化を遂げた」という面白い設定を最終的にどう着地させるのか、この映画の時点では話が進んでいるとは到底言えないため、悪い意味で全く見えてこない。私的には、このままでは設定を活かしきったと言える、観客が納得できるような結末は迎えられないと思っていますが、ジムの登場によって少しでも良い方向に変わることを信じています。

 

サムソンが登場する場面の多くが観客を話に夢中にさせられるようなものであったこと、1本の映画の括りで考えたときにどのように終わるかがまるで予想できないというのは本当に高評価ですが、それ以外のメインとなる話の脚本の出来があまりにも悪いため、総合的な点数は18点という印象になりました。

 

ちなみに、前作をネタバレなしで魅力を紹介した記事を書いています。この記事のようにネタバレありの感想は含まれていませんが、興味がある方はぜひ読んでみてください↓

rozan901.hatenablog.com