
この映画は物語としての面白さと人間のリアルさの描写の両立が上手い。前半と後半での構成の変化によって、物語の見え方が意外になりつつ、登場人物のリアルな心情によって引き込まれるようになっている。
この映画は脚本が上手い。
前半と後半で、それぞれ馬場と望の視点を描くという構成の変化。
それによって徐々に明らかになるそれぞれの登場人物の真実。
そこで描かれる、登場人物のリアルな心情。
スティーヴン・セガールのパロディの『沈黙の沈黙』といった、クスっと笑えるネタ要素。
映像だから表現できる、望の部屋でそれぞれの登場人物が違う理由で責め立てるという、カオスな場面。
これらの要素が、望が受験勉強を頑張っていた理由、馬場に好きな人関連の話をしていた理由も含め、望の青春物語の面白さを増大させている。
特に、後半の早い段階で望の好きな人が、馬場の教え子の一人である凛であると明かすことで、納得感を伴った伏線回収に観客が興奮できるだけでなく、等身大の女子高生の青春物語の導入に成功している。
そして、望と多恵の間に生まれる距離感を、バス内の場面の積み重ねによって、ものすごく自然に、かつ、リアルに描いている。自分が好きな人との付き合いを、多恵が愚痴を直接望に吐き続ければ、リップクリームを貸したくなくなるのも、ビンタするのも完全に納得できるようになっている。
ただ、惜しい点はありました。馬場の視点での展開が大して必要性がないことと、望の行動の一部が納得できない点です。
もちろん、前者については物語としての意外性を持たせられる利点はありますが、望が主人公である印象が強すぎることにより、特に望との片思いが必要ないです。前半と後半のどちらの方が面白いかは観客によって異なりますが、それでも本筋には関係ないことは事実です。また、馬場が望との初対面から好きな人関連の話をしすぎる描写は、あまりリアリティがありませんでした。
後者については、望が馬場のことを何とも思っていないにしては、馬場の肩を割と愛情をもって揉んでいたり、馬場が望の服を脱がしてもなぜか無反応であったりと、納得できない点が多かったのが残念でした。
しかし、全体的に脚本が上手いため、総合的な点数は76点という印象になりました。



