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【ネタバレ感想】映画『空白』98/100点

 

 

この映画は人間の心情をリアルに描くのが本当に巧い。自然体な心情が、それがどこか複雑であることも、自分の醜悪な部分が良くないと思っていながらも、簡単には変われないことも、観ていて創作感を感じることが全くなく、まるでありのままの実話を、一切脚色することなく、そのまま映画にしたようにしか思えませんでした。

 

観客にとことんリアルな重苦しさを感じさせるための脚本が本当に素晴らしい。登場人物の数、それぞれの登場人物に焦点を当てる時間の配分、そして登場人物の行動、計算のされ方が何から何まで完璧でした。何も関係ない選挙の宣伝看板に八つ当たりする翔子。いかにもマスゴミな悪意ある報道。報道された人をすぐにコラ画像化するネット民。再び万引きを見かけるも、自分から手を出せない直人。自分の行動は良くないと思い、弁当屋に謝罪の電話をかける直人。必死に自分の中で抑えていた感情を、ボランティアで思わずぶつけてしまう麻子。そして、居心地の悪さを感じつつも、花音は充との思い出を大切にしていたと分かるイルカの雲の絵の伏線回収。これらが観客にリアルに感じさせるためだけの要素として終わらず、物語としての面白さをしっかりもたらしている。

脚本だけでなく、花音が二段構えで車に轢かれる様子も、観客に絶望感を与える演出として非常に優れていました。

 

直人の痴漢疑惑を学校側が提示したのにも関わらず特に回収されなかった点が残念だったことと、タクシーに乗っている時に充には花音の姿が見えるという演出がいらないように思えましたが、それ以外は本当に非の打ち所がない脚本の完成度から、総合的な点数は98点という印象になりました。