
批評
放射能という見えない恐怖を強く実感できる映画となっている。
今作の大まかな内容は、「核爆弾が落ち、老夫婦が核による放射能に気付かず徐々に変化が出始める」というアニメ劇だ。
今作は基本的に原作に忠実だ。少し台詞回しの違いや台詞のカット、展開の順序の違いがあるが、原作との差異はほとんどないと思ってもらってよい。
今作は放射能に関する知識があるかないかで見え方が大きく変わる。
今作の登場人物は老夫婦だけであり、夫の方は核爆弾の知識について多少知っているが、夫婦の両方とも放射能について特別な知識はない。
今作は「知識がない」人たちを軸に描かれ、「知識がある」人にとっては「これをやったらまずい」という行動に出る。
しかし、現実でいざ核が落ちた状況に自分も陥ると、このような行動に移るのではないかと、どこか実感できる。
冷静さを失っているであろう老夫婦の行動こそが自然と言え、知識の有無に関係なく、自分も見えない恐怖に苛まれるのではないかと納得させられる構成だ。
辛い内容であるため、原作を読んだ方は無理に今作を観る必要はないが、原作未読であり、核に関する知識があまりない方は一度は観てほしい一作である。
原作は↓
スタッフ・キャスト
監督:ジミー・T・ムラカミ
脚本:レイモンド・ブリッグズ
原作:レイモンド・ブリッグズ
キャスト:ジョン・ミルズ ペギー・アシュクロフト 他
1986年制作/85分/イギリス
