批評
今作で描くのは、行き過ぎた警察官と、理解されない精神疾患である。
今作はあらかじめ冒頭で実話に基づいていると示される。また、今作の題名からどのような結末をたどるかは分かりきっている。
今作の大まかな内容は、「間違って緊急通報をした精神疾患を抱えている男性が、警察が家に来てもドアを開けられずに苦しい思いをする」というスリラー劇だ。
その精神疾患を抱える男性が主人公ことケネス・チェンバレンなのだが、警察は主人公がなかなかドアを開けないことに苛立つ。視聴者の中にも警察と同じように苛立つ方がいるのではないだろうか。
もちろん、主人公がドアを開けない理由は明示される。
はっきりと言葉では言及されないが、劇中の多くの場面で主人公が何らかのトラウマを抱えている描写がされる。
家に来た警察のほとんどは、そんな苦しい思いをしている主人公に寄り添うことなく、行き過ぎた行動に出てしまう。
今作は精神疾患を理解するために必要な映画だ。
もちろん、視聴者の多くは警察側の気持ちも理解できるだろう。しかし、今作に至っては主人公を理解しなければならない。「ドアを開ければ良いじゃないか」と苛立たないでほしいと私は感じる。
精神疾患を抱える人にとっては観ていてとても辛くなるため視聴を勧めない。
それ以外の方には、実話であるからこそ、このような悲劇が現実に少しでも無くせるよう、一度は全員に観てほしい映画である。
スタッフ・キャスト
監督:デヴィッド・ミデル
脚本:デヴィッド・ミデル
キャスト:フランキー・フェイソン スティーヴ・オコネル エンリコ・ナターレ ベン・マーテン ラロイス・ホーキンズ アニカ・ノニ・ローズ 他
2019年制作/83分/アメリカ