
この映画は演出が上手い。虚無に満ちた登場人物たちが徐々に壊れていく様子を、カットの構図や登場人物の表情、間の使い方などによって、観客が不気味さや気まずさを感じられるようになり、それでも映画に引き込まれるようになっている。
この映画は謎の場面がほとんどを占め、理由もよく分からないまま登場人物たちが壊れていくという不条理ホラーだ。壊れていった結果、最終的に自殺したり、事故に巻き込まれたり、殺されたりするわけだが、死に方・殺し方の見せ方が特に上手い。
前店長の今井が、死ぬ直前の堺との会話で笑顔の状態からゆっくり真顔になるという、明らかに様子が変であると分かる点。
屋上に人がいるという謎のカットが、後に隣の店の店長が自殺するという布石になっている点。同時に、死ぬ直前の表情や言動からも様子が変であると分かり、さらには室田も下敷きになるという、印象的な死に方を描いている点。
オーナーが「『またのご来店をお待ちしております』じゃなくて『またお越しくださいませ』」と永遠に言っていて、それもテレビの放送休止中の画面を見ながら言い始めたことから、完全に壊れたことが伝わる点。
壊れたオーナーが本部の社員をフライヤーで、青木を焼き鳥の串で殺したりと、印象的な殺し方を描いている点。
堺が研修から帰ってきて、理想の店を想像してワクワクしていたら、返り血を浴びたオーナーが出てきて、店が凄惨であるという現実に引き戻される点。
堺が研修から帰ってきて、理想の店を想像してワクワクしていたら、返り血を浴びたオーナーが出てきて、店が凄惨であるという現実に引き戻される点。
そして、堺が現実に引き戻された瞬間、サラダチキンのコーナーに置いてある小河の生首が映し出される点。
これらの要素によって、観客が見事に不気味さや気まずさを感じられるようになり、先読みができないことによって映画に引き込まれるようになり、人が死ぬ描写で驚けるようになっている。
ただ、惜しい点はありました。良くも悪くも不条理ホラーで、物語に因果関係というのは存在せず、中身がほとんどないことです。
不気味な演出頼みの中、ドールマスクを被った客や堺の母親、不動産の社員、美容専門学校の先生、サバの味噌煮を頼んだファミレス客の殺害など、不気味さを感じさせるためだけに登場している人物や殺害描写が物語の本筋に一切関係なく、はっきりいらない要素として目立っていたのが残念でした。
また、いくら不条理ホラーとはいえ、人が死んでも警察が一切登場しない点が、観客が明らかに違和感を抱きかねない要素となっていたのが残念でした。
しかし、理由が分からない不気味さによって、映画に引き込まれる構成は見事であったため、総合的な点数は68点という印象になりました。